物忘れが多くなる原因は何なのか気になる方も多いでしょう。
個人差はあるものの、50代になると身体機能や脳機能が若い頃と比べると衰えてくるのは一般的です。
しかし、物忘れに自覚症状があるのならば、早めに対処法を考えて実践することをおすすめします。
本記事では、物忘れの原因、認知症、発達障害、物忘れの対処法などを解説します。
もくじ
物忘れ(健忘)とは
過去の出来事を部分的または完全に思い出せなくなったり、新しい記憶を保持できなくなったりすることを健忘と言います。
また、過去の心理的要因を消そうとする健忘の症状もあります。
健忘になる原因は、「外傷性脳損傷、変性、代謝性疾患、てんかん発作、心理的障害」などです。
症状が始まるきっかけは、脳に何らかの外傷ができたことや、アルツハイマー病によるもの、ウイルスの侵入による脳炎、薬の副作用や過度の飲酒などがあげられます。
一方、加齢による記憶障害を良性健忘と言い、一般的には物忘れと呼ばれています。50代を過ぎると年齢相応に更年期による記憶障害の症状が見られます。
加齢に伴い健忘が増える背景
50代になると、今までよりも記憶力や集中力がなくなり物忘れ(健忘)が多くなります。
物忘れの原因は、加齢によって脳機能や身体能力が低下し、学習・記憶能力と関係の深い脳のシナプス伝達能力が衰えるからです。
例えば、朝、食べたものがすぐ思い出せなかったり、眼鏡をどこに置いたか忘れてしまったり等、日常のちょっとしたことから記憶力が低下し始めます。
女性の場合は、更年期になると女性ホルモンのエストロゲンが減少し、物忘れの進行が顕著となってきます。
物忘れの度合いが日常生活に支障が出てくると、脳の疾患が発症しているケースもあり、認知症のリスクが高まります。
健忘と認知症の違い
50代になって物忘れが多くなった場合に、加齢による健忘か?認知症の初期症状か?
ご自身の症状や思い当たる原因を考えて確認してみましょう。
障害の種類 | 認知症 | 健忘症 | 加齢による物忘れ |
原因 | アルツハイマー型認知症
血管性認知症 レビー小体型認知症 前頭側頭型認知症 |
頭部外傷
過度のアルコール飲酒 薬の副作用 精神的ダメージ ストレス |
更年期 |
自覚症状 | ない | ある | ある |
主な症状 | 記憶障害
実行機能性障害 失語障害 |
記憶障害 | 記憶障害
認知機能の低下 緩慢な動作 不眠 |
認知症は何歳から罹患リスクが上昇する?
認知症を発症する年齢は65歳以上で、7人に1人の割合で年齢を重ねるほど発症する可能性が高まります。
認知症の前段階となる軽度認知障害(MCI)の人も加えると、4人に1人の割合で認知症になっている状況です。
軽度認知障害(MCI)の人で認知症に進行するのは、年間でおよそ10%〜15%です。
50代になって物忘れが多くなったと感じる方は、軽度認知障害の可能性があります。
また、65歳未満で発症する認知症を「若年性認知症」と言います。
10代~20代でも認知症にかかるケースもあり、仕事や学業に支障が起こる理由が、ストレスやうつ病と間違えやすく自己判断ではわかりずらい病気です。
物忘れがひどい場合に疑われるそのほかの障害
物忘れが、加齢によるものではなく、脳に関係する疾患・障害である場合もあります。
発達障害、高次脳機能障害について確認しましょう。
発達障害
先天的に脳の発達が健常者とは異なる状態を発達障害と言います。
発達障害のある人は、他人からみると自分勝手で困った人と思われやすく、障害となる症状については、性格の問題や親のしつけなどが原因だと勘違いされることが多いです。
発達障害には、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害AD/HDなどがあります。
発達障害は、対人関係で問題になりやすい一方、類まれな才能を発揮する傾向があります。
ADHD・注意欠陥・多動性障害
「不注意」「多動」「衝動性」を主な特徴とする発達障害です。
- 不注意:忘れっぽく集中できない
- 多動:じっとしていられない
- 衝動性:考える前に行動してしまう
幼少期に診断されるケースと、大人になってADHDと気づくケースもあります。
職場でミスが多かったり、周りとのトラブルが増えたりした場合に、ストレスや性格の問題ではなくADHDであると50代過ぎてから判明する人もいます。
ASD・広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群等)
「社会性の難しさ」「コミュニケーションの難しさ」「興味・関心の偏り」を主な特徴とする発達障害です。
- 人との社会的な相互関係を築くことが苦手である
- 他者との言葉のやり取り(理解 と 表出) が難しい
- 興味の幅が狭く強いこだわりがある
さらに、感覚の偏りや、不器用さ、睡眠の異常、過集中、記憶力が良いなどの特性があります。
ASDの症状は子どものころから出ていますが、大人になってから仕事や家庭内環境の複雑さから、心の病に陥って専門医の診断を受けて気づくこともあります。
高次脳機能障害
脳卒中や交通事故などで脳の一部を損傷したために、思考・記憶・行為・言語・注意などの脳機能に障害が起きた状態を高次脳機能障害と言います。
外見からはわかりにくいため、周りから理解されにくい障害です。
高次脳機能障害の症状は、個人差があり場面や環境によって症状の現れ方が異なるため、周りを困らせてしまうこともあり、本人と社会との関係性を保つのが難しい障害です。
※主な症状
- 言いたい言葉が出てこない
- 相手の話している言葉が理解できない
- 朝起きてから何をしたか思い出せない
- 道に迷う
- 思いつきで行動する
記憶力をセルフチェックする方法
物忘れが多くなった場合、以下の内容から記憶力をセルフチェックしてみましょう。
問題なくできる(1点)だいたいできる(2点)あまりできない(3点)できない(4点)でチェックして合計が20点以上の場合は、認知機能の低下が現れています。
- 物を置いた場所がわからなくなる
- 5分前に聞いた話を思い出せない
- 周りの人から「いつも同じ事を聞く」と言われる
- 今日が何月何日かわからない
- 言おうとしている言葉が、すぐに出てこない
- 家賃や公共料金の支払いは一人でできない
- 一人で買い物に行けない
- バス、電車、自家用車等を使って一人で外出できない
- 自分で掃除機やほうきを使って掃除ができない
- 電話番号を調べて、電話をかけることができない
関連記事:物忘れ防止対策とは?セルフチェックで生活習慣を見直しましょう
物忘れがひどい場合の対処法
物忘れは、記憶力を向上させるリハビリや運動、トレーニングなどによって回復するケースもあります。
日頃の生活習慣を見直して、物忘れを悪化させないようにしていきましょう。
脳トレ
認知機能を改善するために、記憶力や集中力などを鍛えるトレーニングを行います。
数字や漢字、パズル、計算などさまざま方法を利用してドリルやアプリで脳を活性化し、記憶力を高めます。
関連記事:脳を鍛える方法と、脳トレとあわせて取り入れたい習慣
コグニサイズ
コグニション(認知)とエクササイズ(運動)を組み合わせてできた名称です。
全身を動かす運動と頭で考える課題をセットでトレーニングをします。
考えながら体を動かすことで、脳機能の衰えを回復させる効果が期待できます。
運動
適度な軽い運動を1日10分程度行うことで、記憶力の向上に繋がります。
運動不足は、記憶力だけでなく、身体機能や認知機能を高めるためにも役立ちます。
また、反復運動を行って繰り返し継続することで、身体が自然と記憶するような訓練も記憶力の回復に効果があります。
メモの習慣
頭で覚えていられない内容は、メモの習慣をつけると物忘れ防止になります。
大事な予定はカレンダーにメモすることや、人の名前や固有名詞をメモしておくなど、視覚的な要素を取り入れると良いでしょう。
スマートフォンのメモ機能を使うのもおすすめです。
記憶力を損なうおそれのある習慣
記憶力を低下させるのは、飲酒や喫煙、寝不足、ストレスを溜めることです。
生活習慣が乱れると過度な行動に陥りやすいため、マイナスになる習慣は見直しましょう。
飲酒・喫煙
過度な飲酒は、記憶を蓄える海馬が減少するため記憶障害が起きやすくなります。
アルコールによって萎縮した脳は、飲酒をやめて十分な栄養をとることが必要です。
断酒して脳が回復するまでの期間は、およそ半年程度と言われ ています。
喫煙習慣がある人は、脳の大脳皮質が薄くなることがわかっています。
タバコを吸う人は、脳の老化が早まるということです。
タバコを吸わない人と比べ、喫煙者が認知症になるリスクは、2.2倍で、アルツハイマー病になるリスクは、2.3倍になると言われています。
寝不足
寝不足になると脳の海馬が縮小し記憶力の低下を引き起こし、症状が悪化するとアルツハイマー型認知症のリスクが高くなります。
普段から夜更かしや寝不足の習慣がある人は、程よい睡眠習慣を心がけることが大切です。
睡眠のリズムを保たれた質の良い眠りを習慣づけましょう。
ストレス
ストレスが溜まると記憶力にも影響します。過度なストレスが続くと、うつ病、健忘症、認知症を発症しやすくなります。
もし、過度なストレスでコントロールできない状態の場合は、薬物療法、心理療法やリハビリ、ライフスタイルの改善、記憶術の習得など、症状に合わせて対応するようにしましょう。
物忘れは50代から記憶術で回復できます
更年期になると物忘れが多くなって気になる方も多いでしょう。
物忘れが気になる場合は、自覚症状があるうちに、生活習慣を見直したり、脳トレや記憶術などで脳の働きを良くする訓練を始めると良いでしょう。
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