キツネさん
「ワーキングメモリ」という言葉をご存知でしょうか?
脳や記憶、教育の分野において最近特に注目されている言葉で、私たちの生活にも深い関わりを持っています。
- 言われたことをすぐに忘れてしまう
- 暗算や暗記がスムーズにできない
- 2つのことを一度にやるのが苦手
こうした悩みを持つ方はワーキングメモリを鍛えることで、少しずつ解決していくことができるかもしれません。
今回の記事ではそんなワーキングメモリに関する情報や、普段の生活の中にも取り入れられる鍛え方について紹介していきます。
もくじ
ワーキングメモリとは
ワーキングメモリは一般的に、以下のように定義されます。
何らかの作業や動作を行うために必要となる情報を一時的に記憶し、処理する能力のこと。
これを踏まえて、さらにワーキングメモリについての理解を深めていきましょう。
ワーキングメモリの代表的なモデル|Baddeley & Hitch (1974)
ワーキングメモリの仕組みについては、これまで多くの研究者が見解を発表しています。
その中で最も代表的なのが、Baddeley氏、Hitch氏が提唱したモデルです。
Baddeley & Hitchモデルでは、ワーキングメモリは3つの要素によって構成されていると考えます。
- 中央実行系
ワーキングメモリの中心として他2つの機能と作用し合い、注意の制御、処理資源の配分などを行う - 言語的短期記憶
音声による情報を保持するはたらきを持つ - 視空間的短期記憶
目から入った映像や空間の情報を保持するはたらきを持つ
これらが作用することによって、ワーキングメモリは機能すると言われています。
ワーキングメモリが使われるシーン
私たちはこのワーキングメモリを、日常生活の中で無意識に活用しています。
- 人との会話(相手の言ったことを理解し、覚えた上で返答する)
- 読書(読んだ内容をイメージし、記憶を保持しながら読み進める)
- 授業や講義(先生の言ったこと、板書したことをノートに書き写す)
- 買い物(持っているお金と買うものの値段を考えながら商品を選ぶ)
こうした「一時的に何かを覚える」能力は、日常のあらゆる場面で求められるものです。
逆に考えると、ワーキングメモリの機能が弱いとそれだけ生活に支障をきたしてしまうとも言えます。
ワーキングメモリは大容量の情報は記憶できない
ワーキングメモリの特徴として「一度に大量の情報は記憶できない」という点があります。
あくまで一時的に記憶を保持し、処理する能力であるため「多くのものを覚える」役割は持っていないのです。
また、ワーキングメモリは処理された記憶を不要なものとしてすぐに脳から削除するはたらきも担っています。
つまり「ワーキングメモリを鍛える=大容量の情報を記憶できるようになる」という考え方は間違っていることを理解しておきましょう。
ワーキングメモリが低下するとどうなる?
キツネさん
ではここからは、ワーキングメモリが低下することで起こる支障について一緒に見ていきましょう。
記憶ができない|覚えられない
ワーキングメモリは、何か作業や動作を行うため「情報を一時的に脳に保持し」「処理をする」役割を持っています。
つまりワーキングメモリの機能低下によって、この2つの能力が適切に働かなくなってしまうのです。
具体的には「物が覚えられない」だけでなく「処理をする」ことが適切に行われず「必要な時に思い出せない」という事態を招く恐れがあります。
「やるべきことをすぐ忘れる」「さっきまで覚えていたのに、いざというとき思い出せなかった」といった症状が見られたら、ワーキングメモリの低下を疑ってみる必要があるかもしれません。
整理ができない|何に注意したらいいかわからない
ワーキングメモリの「情報を処理する」機能が低下することで生じる支障は他にもあります。
人間は基本的に複数のことを一度に考えることができません。そのためあらゆる知覚から入ってくる情報を「必要or不要」という形で、瞬時に仕分けを行っているのです。
しかしこの機能が低下してしまうと、入ってくる情報を的確に仕分けることができなくなります。
つまりその時々に必要な情報が何かを整理できず、危険を示すサインに対する反応・判断が鈍ってしまうリスクもあるのです。
例えば車の運転中「人や車が飛び出す」「物が落ちてくる」といった一瞬のシグナルを見落としたり、対処が遅れたりすることで、重大な事故を招くケースも少なくありません。
記憶の削除ができない|新たな情報を取り入れにくい
また、情報の処理ができないことによって「新しい情報が頭に入らない」というリスクもあります。
ワーキングメモリが適切に機能しないと、不要な情報を捨てていくことができず、脳は常にいらないものでいっぱいの状態になります。
箱に物を詰めたいときも、箱にそれが入る隙間がなければ無理ですよね。
これと同じように、ワーキングメモリの低下によって記憶の削除が上手にできなくなると、脳に隙間がなくなってしまい、新しい情報を取り入れられなくなるのです。
ワーキングメモリが低下する主な原因は「脳疲労」
ワーキングメモリの低下は「脳疲労」によって、誰にでも起こり得るものです。
文字通り、脳を使いすぎて疲れさせてしまうことで起こる「脳疲労」は、現代の私たちの生活習慣が原因で生じやすくなります。
- 情報過多
テレビ、スマホ、インターネットなどから一度にたくさんの情報を見聞きするせいで、脳は常に膨大な情報処理に追われることになる - ストレス
家庭、学校、職場など生活のどの場面にもストレスを感じ続けることで、脳がその刺激の処理に追われ続けることになる
こうした脳疲労の状態が続くと、ワーキングメモリもどんどん低下し、生活の中で様々な支障が生じることになるのです。
低下したワーキングメモリを回復/解放する方法
では、低下してしまったワーキングメモリを回復し、脳を健康に保っていくにはどうすればいいのでしょうか。
ここからは、ワーキングメモリの能力を発揮させるための回復/解放方法を紹介します。
- 十分な睡眠をとる
- マインドフルネスを実践してみる
- メモを取り情報を脳から移す
十分な睡眠をとる
ワーキングメモリの回復には、まず「脳疲労」を解消することが一番大切です。
そこで最も効果的なのが「十分な睡眠をとって脳を休ませること」になります。
睡眠は、体の疲労だけでなく、脳や臓器の疲労まで回復させるという重要な役割を持つものです。
ワーキングメモリが低下しているという自覚がある方はまず、睡眠習慣を見直すところから始めてみるといいでしょう。
マインドフルネスを実践してみる
近頃、脳疲労の回復につながると特に話題になっているのが「マインドフルネス」です。
瞑想によって頭を空っぽにし、心や意識を「今」だけに集中させること。呼吸だけに集中する方法や、聞こえてくる音だけに集中する方法などやり方は様々。
私たちは常に頭の中でいろんなことを考えたり、意識したりしながら生活していますが、こうした瞑想はそうした状態を一時的に解放してくれるものです。
この「マインドフルネス」と呼ばれる瞑想を1分から5分程度行うだけでも、リラックス効果やストレス軽減、集中力アップ効果があると言われています。
簡単に取り入れられるので、ぜひ隙間時間に実践してみてはいかがでしょうか。
メモを取り情報を脳の外に移す
何か覚えておかなくてはならないことが発生したとき、それを頭の中だけで保持しようとすると脳に負担がかかってしまいます。
こうした問題を解消するために効果的なのが「メモを取る」という行為です。
メモを取って情報を脳の外に移すことで、脳はその情報を常に意識する必要がなくなり、その分負担や疲労も軽減されます。
キツネさん
ワーキングメモリを鍛えて容量を増やすトレーニング
「仕事や作業でもっとパフォーマンスを発揮したい」という方は、積極的にワーキングメモリを鍛えるのがおすすめです。
日常生活の中で少し意識してみたり、トレーニングを取り入れたりすることで徐々に強化していくことができます。
ここからは具体的に、ワーキングメモリの鍛え方について紹介します。
- イメージする
- デュアルタスクをする
- 暗算する
- 対面、ビデオ会議で話す
イメージする
「◯◯をイメージしてみてください」と指示されたら、頭の中にその映像を思い浮かべますよね。
実はこうした「イメージする」という行為は、脳を活性化させ、ワーキングメモリを鍛えることにもつながると言われています。
また、物を覚えるとき、ただ単に言葉だけを頭に入れようとするのではなく「そのものを頭にイメージしてみる」ことで、記憶に残りやすくなります。
このように普段から「イメージする」ということを習慣にしていると、少しずつワーキングメモリが鍛えられていくのです。
デュアルタスクをする
デュアルタスクとは「ながら作業」「二重課題」とも言われ、2つ以上のタスクを同時にこなすことを指します。
2つの動作を同時に行うことで脳が活性化すると言われていますが、特に大きな効果を発揮するのは「運動+思考」のデュアルタスクです。
- 歩きながら暗算を行う
- ストレッチしながらしりとりをする
- ひとりじゃんけん(必ず右手が勝つようにする、など)
- 足踏みしながらクイズに答える
こうした「運動+思考」のデュアルタスクは、認知症予防効果があることでも注目を集めています。
ワーキングメモリの活性化にもつながりますので、ぜひ取り入れてみてください。
暗算する
暗算では「数字」と「+−×÷」といった「演算子」を瞬時に記憶し、頭の中で計算する必要があります。これはまさにワーキングメモリをフル活用する行為です。
筋トレを続けると筋肉がつくように、暗算を習慣として続けてみることでワーキングメモリは少しずつ鍛えられていきます。
「暗算ばかりでは飽きる」という方は、数字パズルやナンバープレイス(ナンプレ)などもおすすめです。
また、こうした暗算やクイズ、パズルは普段使っていない脳の回路を活用することにもつながります。
積極的にチャレンジすることで、ワーキングメモリはもちろん、脳のあらゆる機能を活性化してくれますよ。
対面、ビデオ会議で話す
実は人とコミュニケーションをとっている間にも、ワーキングメモリは活発に働いています。
特に効果が高いのは、メールやSNSではなく「対面のコミュニケーション」です。
私たちは人と対面して話す際、無意識にたくさんの情報を読み取り、そして処理しながら会話を進めています。
- 表情の変化
- 声色の変化
- 言い方(強調しているか、曖昧にしているかなど)
こうした情報の処理が求められる「対面のコミュニケーション」は、ワーキングメモリの活性化にもつながるのです。
「ご時世柄、対面はちょっと…」という場合はビデオ会議やオンラインによる対話でも構いません。
積極的に人と顔を合わせたコミュニケーションがワーキングメモリにも良い影響をもたらすことを、この機会にぜひ覚えておいてほしいです。
ワーキングメモリと発達障害について
これまで解説してきたワーキングメモリは、発達障害とも深い関わりを持っています。
- ADHD(注意欠陥多動性障害)
情報を一時的に保持することが苦手で、注意力が散漫になったり、忘れ物が多くなったりする - LD(学習障害)
視空間や言語を認知する力が弱く「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推理する」など、いずれかの行動に困難が生じる
ワーキングメモリに困難を抱える場合は、周囲のサポートや適切な環境づくりが不可欠です。
特に子どもにそうした兆候が見られた場合は、その子に合わせた支援方法やコミュニケーションのとり方を意識する必要があります。
ワーキングメモリをテストする方法|HUCRoW
ワーキングメモリの特性を測るテストは、様々な種類のものが存在しています。
例えば、広島大学大学院人間社会学研究科で開発された「HUCRoW」というテストは、パソコンやタブレットなどを通じて自宅で受けることが可能です。
- 対象は主に幼稚園年長児
- 2種類のゲームを通じてテストができる
- 所要時間は30分程度
- 「言語的短期記憶」「視空間的短期記憶」などそれぞれの機能に対する評価が可能
こうした負担を極力避けられるテストも多いので、お子様の性格や特性に合ったものを選んでみましょう。
ワーキングメモリに困難を抱える子どもにできること
ワーキングメモリには個人差がありますが、特に困難を抱える子どもに対しては、周りが適切な支援を行うことが大切です。
まずは「何が苦手なのか」「どこに困難を抱えているのか」という特性を理解し、それに合った環境づくりやサポートによって成長を見守るようにしましょう。
- 忘れ物が多い
→幼稚園に行く前日の夜など、持ち物や時間割を一緒に確認する時間を設ける - 指示されたことをすぐに忘れてしまう
→細かく声をかけ、次の行動を促す - 文章を読んでも内容が理解できない
→少しずつ読み進め、理解した上で次に進むようにする - 授業についていけない
→板書を撮影しておき、別の時間で本人のペースに合わせて指導する
まとめ
ワーキングメモリは、私たちが日常生活を送る上で欠かせない能力です。
脳疲労やストレスが原因で低下したり、生まれつき機能が弱かったりすると、それだけ生活にも支障が生じてしまいます。
「ワーキングメモリが低下している」という自覚や、周りから見てそう感じる人がいた場合は、できるだけ早く対処するようにしましょう。
また、ワーキングメモリを活性化する習慣やトレーニングについても、普段からぜひ意識してみてください。
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